くじけず進んできた少年でしたが ここで大きな壁にぶつかりました
とはいっても 本当の壁があるのではなくて
とうとう道の最端まで来てしまったのです
道はなくなっていましたが そこには一匹のおおきないもむしがいました

「あの…」
「ん? 誰だお前は」
「え? 僕は」
「まぁ どうでもいいよ それにしても薄かったな」

答える前にいもむしにさえぎられて 少年はちょっと困りました
何を言っているのだろうとよく見ると そのいもむしは水タバコを持っています

「それ水タバコってやつ? 体に悪いよ」
「いや 大丈夫だ 中身はカルピスだから
 ちょっと水を入れすぎた」
「カ… カルピス…」

いもむしのペースについていけないと思いはじめた少年は
どこかで道を間違ったのだろうと 引き返そうとしました

「で お前は誰だったかな?」

先ほど打ち切られた質問をされて しぶしぶ足を止めます

「僕より 君は誰なんだよ」
「オレ様か? オレ様はオレ様だ」
「ただのタバコ吸ってるいもむしに見えるけど」
「いもむしではない オレ様はオレ様だ これもタバコじゃない」

わけのわからない答えと えらそうな態度にだんだん苛立ってきた少年は
強い口調でいもむしに言いました

「僕は忙しいんだ 茶化すならもう行くよ」
「急いでたのか なら早く言え」
「君が止めたんじゃないか」
「お前が言わないからだ」
「…もういいよ また探さなくちゃ」
「何をだ」
「道だよ ここで行き止まりでしょ?」
「なんだ そんなことか」
「そんなこととは何だよ」
「道ならあるぞ」
「どこに?」
「オレ様だ」
「…は?」
「だから オレ様が道だといってる
 森の外までひとっとびしてやろう」
「何言ってるの 君が飛べるわけないじゃない」
「何故だ」
「だって君はいもむしでしょ?」
「違う オレ様は オレ様だ」

いもむしは立ち上がって 羽織っていたマントを豪快に脱ぎ捨てました
すると その下からは虹色に輝く大きな蝶の羽が現れました

「は…羽?!」
「どうだ オレ様は飛べるぞ?
 まかせておけ」
「…なんだか納得がいかない…」

少年は小さな声で言いましたが いもむしはきこえていないようでした
それから少年は いもむしとともに飛び上がると
蝶とは思えないほどのスピードで森を離れるのでした



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