「昨日は…その 悪かったな」
「え?」

昨日とは違って 調子がいいのか
振り返ったその笑顔が …なんだ
綺麗だなんて 思ってしまった

「もう手ぇ抜いたりしねぇから安心しな」
「ふふっ それはよかった
 …僕もごめん ちょっとイライラしてて」

そう言って苦笑した顔も なんだか儚げで

「……オマエ どっか悪いのか
 あれは熱射病とか 貧血とか そんなもんじゃねぇだろ」
「…」
「六本木?」
「…言いたくない」
「は…?」

小さく言ってから 何かを吹っ切ったように話し始めた
もう日は沈みかけている
あたりは夕日に染まっていた


「オマエ…そんな体で…?」
「治ったと思ってたんだ …だからこの学校にまで入ったのに」

あの人を追いかけてきたのに

まただ 俺は
こいつにこんな表情しかさせてやれない

「他に誰が知ってるんだ」
「監督と… あとは一ノ瀬キャプテンも知ってたんじゃないかな」
「一ノ瀬さん?」
「やっぱりすごい人だよ キャプテンは」
「…オマエの追ってきた人って…」
「違うよ 一ノ瀬先輩じゃない
 似てるけど 違う人」

僕に野球をおしえてくれた 

「…追いつきたいんだな」
「え?」
「優勝できたら 一歩は近づくのか?」
「それは…」
「一ノ瀬さんにも約束したからな
 …俺たちの最後の夏は 全国制覇だ」
「はは…そんな簡単に…」
「俺たちならできる どっかの天才さんがいるからな」
「そっか…猪狩…」
「だから 六本木」

赤く照らされたその瞳は
かすかに潤んで見えた

「負けるなよ」

驚いた顔をして でもすぐに
涙を浮かべて笑っていた


僕は負けないよ 二宮


そういって見せた強い視線も
綺麗だと 思っていた


俺は どうしたんだ



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